心臓病 |
近年、ワンちゃんの寿命が延びるにつれて、
今までは注目されてこなかった病気のことを耳にする機会が増えてきました。
今回からのシリーズを通して、ワンちゃんの心臓が起こしやすいトラブルに
ついてよく知っていただき、 愛犬とのかかわり方を考えていきましょう!
心臓病とひと言で言っても、それには様々な病態が含まれます。
その中でも特にワンちゃんで最も多く発症する 『僧帽弁閉鎖不全症』という病気を
取り上げていきたいと思います。
ちなみにこれ、『そうぼうべん へいさ ふぜんしょう』と読みます。笑
今回は第1回目として、まず、心臓そのものについて学んでいきましょう。
心臓には4つの部屋があり、全身に血液を送り出すポンプの役目を果たして
います。
まず、身体の中をめぐる、血液の流れについてみていきましょう。
心臓と血液の流れを語る上で、とても大切なポイントがあります。
それは、『血液の流れは必ず一方通行』…ということです。
健康な状態では、この血液の一方通行が逆送することはありません。
どうしてかというと、逆流を防いで効率よく血液を運ぶために、
心臓には特別な仕掛けがあるからです。その特別な仕掛けのひとつが、
僧帽弁(そうぼうべん)と呼ばれる、逆流防止策です。
この僧帽弁がうまく働かないと血液が逆流してしまうので、
いろんなトラブルを引き起こします。
これが僧帽弁閉鎖不全症という病気です。
さて、前回は心臓のはたらきや血液の流れに関してお話しました。
今回は具体的な病気の話をしていきたいと思います。
Q.僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべん へいさ ふぜんしょう)ってどんな病気?
A.僧帽弁という弁がうまく閉じなくなり、血液が逆流してしまう心疾患です。
心臓の中で、血液の流れは必ず一方通行です。
ところが、この僧帽弁にトラブルが起こると、血液一方通行の仕組みが
崩れてしまい、血液の逆流を起こしてしまうのです。
前回から逆流、逆流と何度も繰り返してきましたが、
実際にはどのようなことが起こっているのでしょうか。
血液の逆流が起こると、効率よく血液が送り出されなくなるので、
心臓がそれをカバーしようといつも以上にがんばってしまいます。
その状態が続くと、やがて心臓に疲れがたまってしまい、
それが限界に達した時、身体のあちこちで血液が十分行き渡らず、
【様々なトラブルが症状として現れます。】
この血液がしっかり送り出せなくなった状態を心不全(しんふぜん)と言います。
症状が進行してくると、全身に送られずはずだった血液が
心臓の中にたまってしまい、結果...
心臓が血液でパンパンに膨らんだ状態、つまり...
【心臓が大きくなる】
病状が進行すると、心臓とつながった肺にも、その影響が出てきます。
最終的には、 肺やその他の場所に、行き場を失った水分が漏れ出し、
あなたのワンコの命にかかわる、大変な事になってしまいます!
僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべん へいさ ふぜんしょう)の
症状について見ていきましょう。
実はこの病気、最初は症状がありません。
だから、
・気付かない。
・病状が出た時は病気が進行している。
それだから、【本当に怖いんです。】
病院で定期健診を受けていない限り、まず気が付かないでしょう。
ちなみにまりもでも健康診断をしているので、詳細は最後に書いておきますね。
それでは、話を戻して、よくみられる症状を挙げてみましょう。
【咳】
最も気付きやすいと言えます。
・夜から朝方にかけて咳き込む。
・興奮した時に咳き込むことが多くなります。
少しでも気になったら、いつでも診察でご相談くださいね!
【疲れやすい】
心肺機能が落ちるため、息があがりやすくなります。
つまり、散歩や運動を嫌がるようになります。
今まで大好きだった散歩を嫌がるようになったら、 要注意です!!!
【息苦しい(呼吸困難)】
症状が進み、肺に水が溜まると、陸上にいながら 『溺れている状態』になります。
酸素が全身に行き渡らないで、舌の色が真っ青?紫色に見える
『チアノーゼ』という状態になることがあります。
心臓にトラブルを抱えた子は 呼吸困難になりやすいので注意が必要です。
最初にもお伝えしましたが、 症状が出てくる時には病状が進行していることも
少なくありません。 定期的に動物病院で健診を受けて、
病気の発見や病状の全体を把握にすることは重要です。
人間の治療と違い、 犬の場合、心臓手術はあまり一般的ではありません。
お薬の服用でケアしていくことになります。
言い方を変えると、その子の持っている心臓を最後までうまく使い続けていく
必要があるということになります。
血のめぐりが悪くなってくると、それをなんとか補おうとして心臓はますます
頑張って血液を送り出そうとします。そんな心臓に対して、
ムリしすぎないように少し休ませてあげるためのサポートをする。
それが、お薬の役割になります。
心臓への負担を減らしてあげることで、結果的に、心臓が長持ちします。
僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべん へいさ ふぜんしょう)を含む
心疾患の治療に使うお薬は、ちゃんとした効果はありますが、
効き目が強いわけではありません。 症状がひどくならないように飲み続けることで
効果を発揮します。 それなので、たとえ効果が感じられなくても
継続して服用することが大切なんです。 心臓が抱えているトラブルの種類や、
心臓自体の状態によって選ぶお薬は様々です。
また、強いお薬を使えば必ずよくなるというものでもありません。
不安な点があれば、 かかりつけの獣医さんと『しっかり』相談しましょう!
最後に、
治すことこそ難しい病気ですが、 うまくこの病気と付き合っていくことができれば、 平均寿命まで楽しく生きることも十分可能な慢性疾患です。
早め早めの対策が大きく影響してきますので、
ワンちゃんに元気で長生きしてもらうために、
定期健診はしっかりしていきましょう!!!