食糞について

 ほとんどの犬にとって、ウンチを食べる行動(以下「食糞」と言います)はあくまでも正常な行動です。

   でも、人間からしたらやっぱり不快ですよね。できることならやめさせたい…と思っている飼い主さんがほとんどのはずです。

 なぜウンチを食べるのでしょうか。実は、いろいろな理由が考えられるのです。

  主な理由を4つあげてみましょう。


 まず「嗜好性」が考えられます。
つまり、「おいしいから」食べるのです。

  食糞は仔犬に見られることが多いのですが、仔犬は消化能力が未発達のため、ウンチの中に未消化物が残っていることがあります。食欲旺盛な仔犬にとって、そんなウンチは食べ物としてとても魅力的です。

   このようなケースでは、仔犬が成長するにつれて、自然と食糞しなくなることが多いような気がします。

   仔犬だけではなく、成犬であっても、単においしいから食べることはあります。肉食である猫のウンチは、犬にとってなかなかのごちそうらしく、散歩中に落ちていた猫のウンチを食べてしまうなんてこともよく聞きます。

 次に考えられる理由としては、「空腹」です。

   生まれつき食欲旺盛の子もいますし、飲んでいるお薬などの影響で多食になる子もいます。そういう子は、とにかく自分の過度の食欲を満足させるためにウンチを食べることがあります。

   また、消化不良の状態(例えば膵外分泌不全や腸管疾患など)にあったり、栄養バランスが偏った食餌を与えられている犬では、足りない栄養素を補足するためにウンチを食べたり、十分な量の食餌が与えられていない犬は、足りないカロリーを補うためにウンチを食べることがあります。

 3つ目の理由が、「関心を求める行動」です。

  ウンチを食べると、飼い主さんが自分に注目してくれることを知った犬は、その後も飼い主さんの関心を得るために食糞をすることがあります。

 そして、4つ目が、単なる「退屈」です。

  散歩や遊びが足りていない子や、留守番が長すぎる子などは、退屈をまぎらわすためにウンチを食べることがあります。

 それから、まれではありますが、不安からくる行動のこともあります。

  不安傾向の高い犬は、食糞をすることで不安をまぎらわそうとすることもあると言われています。

 では、食糞をやめさせるにはどうしたらいいでしょうか。

 まずは、なぜ食糞をするのか、先にあげた中から原因を考えてみましょう。

   食餌は栄養バランスがとれていますか?量は十分足りていますか?消化不良を起こすような病気にかかっていませんか?

  もし、判断に困るようであれば、一度獣医師に相談してください。

  運動や遊びは足りているか、退屈な生活をさせていないかなどについても、もう一度振り返ってみてください。

 そして、大切なことは、愛犬がウンチを食べてしまった時の飼い主さんの反応です。飼い主さんの関心を得たい子は、叱られることさえもご褒美になってしまうことがあります。

  逆に、排便すると叱られると勘違いした犬は、見つかる前にウンチを食べて隠してしまおうとしたり、トイレ以外の場所でこっそり排便をするようになることもあります。

  また、食糞されるよりも前にウンチを片付けてしまおうと、排便中にお尻のそばで待ち構えている飼い主さんもいますが、これは逆効果になる可能性が高いです。

   「こんなにムキになってウンチを奪おうとするなんて、ぼくのウンチってすごい宝物なんだ!」と思ってしまい、もっと急いで食べるようになることがあります。

   実際に、飼い主さんに取られまいと、体をくねりながら排便をし、出てくるウンチをそのまま食べるようになってしまった犬がいました。

 そういう時は、排便をしたら、すぐに名前を呼んで、大好きなおやつなどでウンチから離れた場所へと誘導し、犬の気がそれたタイミングで、ささっと無言でウンチを片付けましょう。

  2人で協力するとやりやすいのですが、もし1人で始末する時は、大好きなおもちゃ やおやつなどを遠くに投げて、取りに入っている隙に何事もなかったかのように片付けてください。普段から名前を呼ぶと振り向くようにしたり、「オイデ」などの練習をしておくといいかもしれませんね。

 気づいた時には、すでにウンチを食べ始めてしまったら…、その時は、目をつぶって無反応を貫いてくださいね。